自然をよくよく観察してみると非常に絶妙なシステムとバランスが保たれていることがわかります。
小学生の時、食物連鎖のピラミッドを勉強したかと思いますが、本当は弱いものが強いものを支えているというだけではなく、強いものが弱いものを支えている側面も持ち合わせています。長い時間かけて構築されたその絶妙なバランスはそのうちのどれか一つの要素が欠けても成り立ちません。天候などの環境の変化でそれぞれの量が変動したとしても、全体としては一定に保たれるようにほかの要素が調整する機能が働くのです。
私たちが取り組んでいる農法ではこのシステムに習うことを一番大事にしています。むやみに人間の手を加えると食物連鎖のバランスを崩すことに繋がります。しかし、全く手をかけずに野菜を栽培することは困難で、ある程度野菜が素直に育てる環境整備は必要だと考えます。その中で何があっても受け入れて、待つことは私たちにとっても精神力の向上になる、プラス思考も大事なスパイスです。
自然の中を観察すると、植物は常に多種との勢力争いの中で繁殖し、繁栄したり衰退したりの繰返しをしているようにみえます。全滅するものはなく、住む場を変えたり、相手が弱る時を待っていたり、協力関係をむすんでいたり。生命全体としての営みが続くようにできていると感じます。野菜つくりはそんな大自然の前になんつぶかの種を蒔いたからといって、やすやすと生育することは難しい。その中で試行錯誤しながらの野菜つくりは今後もずっと私たちの学びです。まだ途中段階ではありますが、野菜が素直に育てる環境つくりに日々取り組んでいます。
最低限の雑草の管理(草刈り)をします。
野菜の生育段階の初期(赤ちゃん)を越す頃までは、野菜の周りの雑草は野菜の背丈より伸びない程度に刈り、雑草に負けないようにします。むやみに除草すると、虫たちの住みかが追われ、野菜の方に集中してしまいます。それに農薬や熱消毒を繰り返せば、薬や熱に強い草や虫、病原菌が生き残り、その畑を支配してしまいます。雑草と野菜との間で虫たちの住みかを分散させて、虫害を防ぎます。そして雑草の強力な根っこが伸びて水分を吸い上げるので、ある程度の湿度が保たれることも野菜の生育の支えになります。
虫や小動物、微生物の営みからうまれる糞や死骸、季節により雑草たちのの入れ換わる積み重ねで、豊かな有機質の土が出来ていきます。その土から肥料を与えずとも野菜が育つことができています。日々積み重なる営みを崩さないように、機械での耕運もほとんどしていません。
同じ場所に同じ野菜を栽培し続けると同じ病気や虫が土の中に残ってしまい、次の栽培に影響を与えることがあります。一つの野菜が病気や虫害にあっても全体的にある程度の収穫量があるように、たくさんの種類の野菜を少しずつ作り、毎年、野菜の栽培場所を科目ごとにローテーションさせて一部の虫や病原菌を増やし過ぎないようにしています。
一般的に売られている種はF1種(味や形、収穫量をより優れたものに交配された種)が多く、種を残して性質が安定するのに7年(7代目)かかるといわれています。私たちは育てた野菜から種をとり、栽培し、また種をとることを繰り返すことで、土の子の畑に合った種での野菜つくりを目指しています。自分たちの野菜から種をとっていくことは目に見えて確実で楽しいことです。